金庫株解禁等に伴う商法改正(平成13年法律第79号)の要綱

商法等の一部を改正する等の法律案要綱

第一 商法の一部改正

一 自己株式の取得及び保有制限の見直し

1 自己株式の取得(第210条関係)
(一) 会社が自己の株式を買い受けるには、別段の定めがある場合を除き、次の事項につき定時総会の決議がなければならないものとする。(第1項及び第2項関係)
 (1) 決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時までに買い受けることができる株式の種類、総数及び取得価額の総額
 (2) 特定の者から買い受けるときは、その者
(二) (一)(1)の取得価額の総額は、配当可能利益を超えることができないものとする。(第3項関係)
(三) (一)の定時総会において法定準備金の減少又は資本の減少の決議をした場合には、取得価額の総額の決議に当たっては、(二)の配当可能利益に、その決議により減少する法定準備金の額又は資本の額を加えることができるものとする。(第4項関係)
(四) (一)(2)の事項を定めるときは、(一)の決議は、特別決議によりしなければならないものとする。(第5項関係)
(五) (一)の決議をする場合における議案の要領は、招集通知に記載しなければならないものとする。(第6項関係)
(六) (一)(2)の事項を定める場合においては、株主は、自己をも売主に加えることを請求することができるものとする。(第7項関係)
(七) (一)の決議に基づいて株式を買い受けるには、(一)(2)の事項の定めがあるときを除き、市場取引又は公開買付けの方法によらなければならないものとする。(第8項関係)

2 自己株式の取得に関する経過措置
(一) 直前決算期(この法律の施行前に到来した最終の決算期をいう。以下同じ。)に関する定時総会において旧商法第210条ノ2(ストック・オプション等のための自己の株式の取得)及び第212条ノ2(利益による株式の消却)の規定による決議がされたときは、その決議による授権の範囲内で次期決算期(この法律の施行後最初に到来する決算期をいう。以下同じ。)に関する定時総会の終結の時まで自己の株式を買い受けることができるものとする。(附則第3条第1項関係)
(二) この法律の施行前に開始された相続に係る自己の株式の買受けについては、次期決算期に関する定時総会の終結の時までは、旧商法第210条ノ3(譲渡制限株式の相続人からの取得)の規定による自己の株式の買受けを認めるものとする。(附則第3条第3項関係)

3 自己株式の保有
自己の株式について、消却及び処分義務を課さないものとし、その保有を認めるものとする。(旧商法第211条(自己の株式の失効手続・処分)の規定の削除)

4 自己株式の保有に関する経過措置
この法律の施行前に消却するために買い受けた自己の株式及びこの法律の施行後に第四の一による廃止前の株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律に基づき資本準備金をもって消却するために買い受けた自己の株式については、この法律の施行後も速やかに失効の手続をとるものとし、それ以外の自己の株式については、取得時期にかかわらず、この法律の施行後は、保有することが認められるものとする。(附則第2条及び第24条第1項関係)

5 期末に資本の欠損が生じるおそれがある場合の取得の制限(第210条ノ2関係)

(一)その営業年度の終わりにおいて資本の欠損が生じるおそれがあるときは、自己の株式を買い受けることができないものとする。(第1項関係)

(二) 営業年度の終わりにおいて資本の欠損が生じた場合においては、会社の機関として自己の株式の買受けをした取締役は、会社に対し連帯して、その欠損の額(買い受けた株式の取得価額の総額から既に処分した株式の処分価額の総額を控除した残額が欠損の額より少ないときは、その残額)につき賠償の責任を負うものとする。ただし、取締役が(一)のおそれがないものと認めるにつき注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでないものとする。(第2項関係)

6 自己株式の処分の手続(第211条関係)
(一) 会社が有する自己の株式を処分する場合においては、別段の定めが  ある場合を除き、次の事項につき取締役会決議がなければならないものとする。(第1項関係)
     (1) 処分すべき株式の種類及び数
     (2) 処分すべき株式の価額及び払込期日
     (3) 特定の者であって特に有利な価額をもって株式を譲渡すべきもの並びに譲渡する株式の種類、数及び価額
(二) 株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めがある場合には、(一)(1)及び(2)の事項につき株主総会の特別決議を要するものとする。(第2項関係)
(三) (一)の場合には、新株発行に関する規定を準用するものとする。(第3項関係)

7 自己株式の処分に関する経過措置(附則第5条関係)
株式会社は、平成14年3月31日までの間、代用自己株及びストック・オプションの権利行使の場合を除き、その有する自己の株式を処分してはならないものとする。

8 子会社からの自己株式の買受け(第211条ノ3関係)
(一) 会社は、取締役会の決議をもって、その子会社の有する自己の株式を買い受けることができるものとする。(第1項関係)
(二) (一)の決議は、買い受ける株式の種類、総数及び取得価額の総額についてしなければならないものとする。(第2項関係)
(三) (二)の取得価額の総額は、中間配当の限度額を超えることができないものとする。(第3項関係)

9 保有する自己株式の消却の決議(第212条関係)
(一) 会社は、取締役会の決議をもって、保有する自己の株式を消却することができるものとする。この場合には、消却する株式の種類及び数を定めなければならないものとする。(第1項関係)
(二) (一)の決議をした場合においては、会社は、遅滞なく株式失効の手続をとらなければならないものとする。(第2項関係)

10 資本減少の手続又は定款の定めに従う消却(第213条関係)
(一) 株式は、9によるほか、資本減少の手続に従う場合又は定款の規定に基づき株主に配当すべき利益をもってする場合でなければ、消却することができないものとする。(第1項関係)
(二) 第215条第1項及び第2項(株式の併合の手続)の規定は、(一)により株式を消却する場合に準用するものとする。(第2項関係)
(三) 資本減少の手続に従って株式を消却する場合には、第215条第1項の期間の満了の時に債権者保護手続が終了していないときは、その終了の時に消却の効力が生じるものとする。(第3項関係)

11 配当可能利益算定等における控除項目の整理(第290条第1項第5号及び第293条ノ5第3項第4号関係)
自己の株式を資産の部に計上することを前提としていた規定を削除するものとする。

二 法定準備金の減少手続等

1 利益準備金として積み立てるべき額(第288条関係)
利益準備金として積み立てるべき額は、資本準備金の額と併せてその資本の4分の1に達するまでとするものとする。

2 減資差益の取扱い(第288条ノ2関係)
資本減少によって減少した資本の額が株式の消却又は払戻しに要した金額及び欠損の補填に充てた額を超える場合であっても、その超過額を資本準備金として積み立てる必要がないものとする。

3 法定準備金の減少手続(第289条関係)
(一) 会社は、株主総会の決議をもって、資本準備金及び利益準備金の合計額から資本の4分の1に相当する額を控除した額を限度として資本準備金又は利益準備金の減少をすることができるものとする。(第2項関係)
(二) 資本の減少に関する規定(債権者保護手続等)は、(一)の場合に準用するものとする。(第3項関係)

三 純資産額規制の撤廃

1 額面株式の廃止(第166条等関係)
  株式に関して、額面無額面の区別を廃止するものとする。

2 会社設立時の規制(第166条第2項、第168条ノ3等関係)
  会社設立時の株式の発行価額に関する規定は、削除するものとする。

3 株式の併合(第214条関係)
(一) 会社は、株主総会の特別決議をもって、株式の併合を行うことができるものとする。この場合においては、取締役は、株主総会において株式の併合を行うことを必要とする理由を開示しなければならないものとする。(第1項関係)
(二) (一)の決議をする場合における議案の要領は、招集通知に記載しなければならないものとする。(第2項関係)

4 株式の分割(第218条関係)
(一) 会社は、取締役会の決議により、株式の分割を行うことができるものとする。(第1項関係)
 なお、株式分割後の1株当たりの純資産額が5万円以上でなければならないとする規定(旧第218条第2項)は、削除するものとする。
(二) (一)の場合においては、第342条(定款の変更の方法)の規定にかかわらず、取締役会の決議で会社が発行する株式の総数を株式の分割の割合に応じて増加する旨の定款の変更をすることができるものとする。ただし、現に2種類以上の株式を発行している会社については、この限りではないものとする。(第2項関係)

四 1株に満たない端数の処理

1 1株に満たない端数の処理(第220条関係)
(一) 株式の発行、併合又は分割により、1株に満たない端数を生じるときは、その部分について新たに発行した株式を競売し、かつ、その端数に応じてその代金を従前の株主に交付しなければならないものとする。ただし、端株原簿に記載する端株の部分については、この限りではないものとする。(第1項関係)
(二) 会社は、(一)の競売に代えて、市場価格のある株式は、その価格で売却し又は買い受けることができるものとし、市場価格のない株式は、裁判所の許可を得て競売以外の方法により売却することができるものとする。(第2項関係)

2 端株原簿(第220条ノ2関係)
(一) 株式の発行、併合又は分割により1株の100分の1の整数倍に相当する端数を生じたときは、その端数を端株として、端株原簿に記載しなければならないものとする。(第1項関係)
(二) 会社は、定款で、端株原簿に記載すべき1株の割合について100分の1とは異なる割合を定め、又は1株に満たない端数について端株原簿に記載しない旨を定めることができるものとする。(第2項関係)
(三) 会社の成立後に定款を変更して(二)の定めを設ける場合には、取締役は、株主総会においてその変更を必要とする理由を開示しなければならないものとする。(第3項関係)

3 端株券の廃止
(一) 端株券に関する規定は、削除するものとする。(旧第230条ノ3等関係)
(二) この法律の施行前に発行されている端株券については、遅くとも平成15年3月31日までにすべて廃止されるよう措置を講ずるものとする。(附則第8条関係)

4 端株主の権利(第220条ノ3関係)
(一) 端株主は、別段の定めがある場合を除き、次に掲げる権利以外の株主としての権利を行使することができないものとする。(第1項関係)
 (1) 利益若しくは利息の配当又は中間配当を受ける権利
 (2) 株式の消却、併合若しくは分割又は会社の株式交換、株式移転、分割若しくは合併により金銭又は株式を受ける権利
 (3) 株式の転換の請求権
 (4) 新株、転換社債又は新株引受権付社債の引受権
 (5) 残余財産の分配を受ける権利
(二) 会社は、定款で、端株主に対し、(一)(1)、(3)及び(4)の権利を与えない旨を定めることができるものとする。(第2項関係)

5 端株の買取請求権(第220条ノ6関係)
(一) 端株主は、会社に対して、自己の有する端株を買い取るべき旨を請求することができるものとする。(第1項関係)
(二) 市場価格のある株式に係る端株について買取請求があったときは、その株式1株の最終の市場価格にその端株の1株に対する割合を乗じた額を売買価格とするものとする。(第2項関係)
(三) 第204条ノ4第1項及び第2項(売買価格の決定)の規定は、市場価格のない株式に係る端株について買取請求があった場合に準用するものとする。(第3項関係)

五 単元株制度の創設

1 単元株制度の創設(第221条関係)
(一) 会社は、定款で、一定の数の株式を1単元の株式とする旨を定め ることができるものとする。ただし、1単元の株式の数は、1,000及び発 行済株式の総数の200分の1に相当する数を超えることはできないものとする。(第1項関係)
(二) 1単元の株式の数を減少し、又はその数の定めを廃止する場合においては、第342条(定款の変更の方法)の規定にかかわらず、取締役会の決議をもって定款の変更をすることができるものとする。(第2項関係)
(三) 会社が数種の株式を発行する場合においては、株式の種類ごとに1単元の株式の数を定めなければならないものとする。(第3項関係)
(四) 1単元の株式の数を定めた会社は、定款で1株に満たない端数を端株として端株原簿に記載しない旨を定めたものとみなすものとする。(第4項関係)
(五) 会社は、定款で、単元未満株式に係る株券を発行しない旨を定めることができるものとする。ただし、会社が株主のために必要と認めるときは、その株式に係る株券を発行することを妨げないものとする。(第5項関係)
(六) 株主は、単元未満株式について、会社に対し買い取るべき旨を請求することができるものとする。市場価格のある株式について買取請求があったときは、その株式1株の最終の市場価格をもって、売買価格とするものとする。(第6項関係)

2 単元株に係る株主の議決権(第241条第1項ただし書関係)
1単元の株式の数を定めた場合においては、各株主は、1単元について1個の議決権を有するものとする。

3 株式の種類ごとの1単元の株式の数(附則第9条第1項関係)
数種の株式を発行する会社が、平成13年12月31日までの間に、1単元の株式の数を定める場合については、株式の種類ごとに定める1単株式の数は、同一の数としなければならないものとする。

第二 有限会社法の一部改正

有限会社法について、自己持分の取得、保有及び処分並びに法定準備金の減少手続等について、商法と同様の改正を行うものとする。(第23条ノ2、第23条ノ3、第24条、第46条等関係)

第三 商法等の一部を改正する法律(昭和56年改正法)の一部改正

一 単位株制度の終結(昭和56年改正法附則第15条等関係)
単位株制度は、廃止するものとする。

二 単位株に関する経過措置(附則第9条第2項関係)
単位株制度を廃止して単元株制度を導入することに伴い、この法律の施行の際に、単位株制度をとっていた株式会社は、新商法第221条第1項の1単元の株式の数としてその1単位の株式の数を定める旨の定款の変更の決議をしたものとみなすものとする。

第四 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の廃止

一 自己株式の取得及び保有制限の見直しに伴い、自己株式の取得に関する特  例を定めた株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律は、廃止するものとする。(改正法第4条関係)

二 次期決算期に関する定時総会の終結の時までは、定款の定めに基づく、取締役会決議による自己の株式の買受け及び資本準備金をもってする自己の株式の消却を認めるものとする。(附則第3条第4項及び第24条第1項関係)

第五 施行期日(附則第1条関係)
この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとする。